序章:釣り好き必見!黒潮が“元に戻る”?
釣りをしていると、同じ海でも年によって魚の回り方が大きく違うことに気づく人は多いと思います。
「去年はあんなに釣れたサバが、今年は全然いない」
「秋なのに海水がやけに冷たい」
こうした変化の大きな要因のひとつが、日本沿岸を流れる“黒潮”です。
その黒潮が大きく蛇行し、和歌山沖から伊豆沖までの海況を大きく変えていた「黒潮大蛇行」が、ついに終息したと気象庁から発表がありました。
黒潮大蛇行は2017年8月から始まり、なんと7年9カ月という記録的な長さで続いてきました。これは1965年以降で最長とされています。
今回の記事では、気象庁の発表やJAMSTEC(海洋研究開発機構)のデータをもとに「なぜ終息したのか」「釣りにどんな影響があるのか」を解説していきます。釣果アップのヒントも交えながら、黒潮の動きと向き合っていきましょう。
気象庁による公式報告まとめ
黒潮大蛇行の終息判断
気象庁は2025年8月29日付で、黒潮大蛇行の終息を正式に発表しました。
内容をかみ砕いて説明すると――
- 2025年4月以降、潮岬沖で黒潮が蛇行せず比較的安定した流れに戻った
- 5月9日の時点で「終息の兆し」として公表
- その後数カ月間、安定した流れが続いたことから「終息」と判断
過去最長の大蛇行
この大蛇行は2017年8月から始まり、2025年4月に終息。
7年9カ月という長さは観測史上最長記録となりました。
サンマの不漁やカツオの漁場変動など、黒潮大蛇行は漁業に大きな影響を与え続けてきました。釣り人としても「ここ数年、海が変だな」と感じた方は多いでしょう。
JAMSTECの海洋解析:2025年の流路変化年表
JAMSTEC(海洋研究開発機構)の「黒潮親潮ウォッチ」では、黒潮の流れを詳細に観測しています。特に2025年前半は大きな変化が見られました。
2025年初め
下の図は2025年1月1日時点の黒潮の様子を示しています。今年の幕開けは「黒潮大蛇行」の状態からでした。

1~3月:冷水渦がちぎれる
2月から3月にかけて、黒潮大蛇行の原因となっていた冷水渦の一部が南側から分離しました。
この結果、渦の一部は失われたものの、依然として大規模な冷水渦が残り、黒潮大蛇行そのものは継続しました。

4~5月:黒潮が直線化
4月に入ると、残存していた冷水渦の形状がくびれを帯び、再び一部が分離しました。短期間で二度も大きな冷水渦がちぎれたことにより、渦の勢力は急激に弱まりました。


その結果、黒潮は冷水渦に妨げられることなく比較的まっすぐに流れるようになり、大蛇行と呼ぶには当てはまらない状態となりました。気象庁はこの段階で「7年9か月に及んだ黒潮大蛇行が終息に向かっている」と判断し、5月9日に発表しています。
6月以降:小蛇行の発生
しかし、その後残された冷水渦から再び蛇行が大きく発達し、「蛇行A」と呼ばれる流れが東へ移動しました。この結果、黒潮は八丈島の南側を通過するようになります。

蛇行Aは規模としては大きく、一見「大蛇行」と言えそうですが、従来の大蛇行とは流れ方が異なります。
典型的な黒潮大蛇行は紀伊半島・潮岬から大きく離れて流れ、八丈島の北側を経由します。一方、今回の蛇行Aは潮岬に近い位置を通り、八丈島の南側を流れるという特徴がありました。

このようなパターンは、冷水渦が安定的に居座らず短期間で崩れやすいため、典型的な大蛇行とは区別されます。一方、4月に分裂した「渦2」は西へ移動して黒潮に取り込まれ、新たに「蛇行B」として現れました。
新たに“小蛇行”と呼ばれる渦が発生。JAMSTECはこれを「蛇行A」「蛇行B」と名付けています。
蛇行Aは東に移動しつつ縮小、蛇行Bは潮岬沖で黒潮を少し沖に押し出しています。つまり「完全に真っすぐ」ではなく、小さな蛇行や渦を伴いながら流れている状態です。
現在の黒潮(夏以降)
現在では、予想通り蛇行Aは縮小傾向を見せています。

一方で蛇行Bは黒潮本流に乗って東へ移動し、潮岬付近で黒潮を再び沖合へ押し出す役割を果たしています。
終息って本当に終わったの?再発の可能性も
「もう大蛇行は来ないの?」という疑問を持つ方も多いでしょう。
残念ながら、答えは “まだわからない” です。
JAMSTECのシナリオ
JAMSTECは今後のシナリオを2つ提示しています。
- シナリオA:大蛇行再誕生
一度小さくなった蛇行が再び成長し、大きな湾曲に戻る可能性。 - シナリオB:完全終息
渦は消え、黒潮は直線的に流れ続ける。
つまり、今回の「終息」は“一区切り”。
数年以内に再び大蛇行が始まる可能性は十分あるのです。
釣りへのリアルな影響
ここからは釣り人にとっての具体的な影響を見ていきます。
大蛇行中(2017~2025年)の特徴
- 黒潮が沿岸に接近 → 水温が平年より高め
- カツオ・シイラなど暖水系の魚が豊漁に
- サンマ・イワシなど冷水系の魚は不漁に
終息後(2025年春~夏)の特徴
- 春:駿河湾などで平年より1℃以上低い水温
- 夏:逆に4℃以上高いなど、乱高下が目立つ
- 沿岸釣りでは「アジの活性が落ちた一方、シイラやカツオが好調」といった声も
つまり、終息後は「安定」ではなく「変動の激しさ」が特徴です。
長く続いた黒潮大蛇行が終息しつつあることで、釣り人にとっても海況は大きな変化を迎えています。大蛇行の期間中は、沿岸に冷たい水塊が入り込みやすく、潮の流れが複雑になったため、狙える魚種や釣果の安定性にも影響が出ていました。特にカツオやマグロ類など回遊魚の接岸が遅れたり、アジ・サバといった小魚の群れがバラけたりすることも少なくありませんでした。
しかし、大蛇行が落ち着くと黒潮は本来の直進的な流れに戻り、安定した暖流が沿岸を潤すようになります。これにより、回遊魚が再び近海に寄りやすくなり、カツオやソウダガツオ、シイラといった青物が沿岸で釣れるチャンスが増えると考えられます。さらに、黒潮がもたらす豊富な栄養塩によってベイトとなる小魚が集まりやすくなり、それを追ってフィッシュイーターも活発に動くようになるでしょう。
もちろん、黒潮の動きは完全に安定するわけではなく、短期的な蛇行や渦の発生によって局所的な変化が続きます。そのため釣行の際には、気象庁や海洋研究機関が公開している黒潮の最新データや海況図を参考にし、狙う魚種や釣り場を柔軟に選ぶことが重要です。
いずれにせよ、大蛇行の長い時代がひとまず区切りを迎えたことで、これからは釣り人にとって「黒潮本来の恩恵」を受けられるシーズンが期待できると言えるでしょう。
まとめと今後に向けて
今回の黒潮大蛇行の終息は、単なる海洋現象の変化にとどまらず、私たち釣り人にとっても大きな意味を持っています。7年9か月もの長い間、黒潮の流れは不安定で、釣果にも一喜一憂させられることが多かったはずです。潮が冷たく感じたり、魚の群れが例年の場所に見当たらなかったりと、現場で違和感を覚えた方も少なくないでしょう。
それがようやく一区切りを迎えたことで、今後は黒潮が本来の力強い流れを取り戻し、沿岸の海を豊かにしてくれることが期待されます。カツオやマグロ類といった回遊魚の寄り、アジやサバの安定的な群れ、さらにはそれらを狙うブリやヒラマサといった大型青物の回遊も戻ってくる可能性があります。つまり、釣りの舞台はこれからますます盛り上がっていく、そんな兆しが見えているのです。
黒潮大蛇行の長い時代を経験した今だからこそ、その終息は新たな釣りの幕開けを告げています。次の釣行でどんな魚に出会えるのか、どんな海況が待っているのか。これからの釣りは、期待と可能性にあふれていると言えるでしょう。




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